TITLE:第7回 「学習活動の基本スキル(1)」 *第7回 学習活動の基本スキル(1) [#ubae18f0] これまでのゼミの資料は、次のサイトに公開されています。 印刷した資料が必要な場合は、サイトからプリントアウトしてください。 -http://arena.hyogo-dai.ac.jp/~kawano/kisozemi/ -ゼミに関係する書籍などの情報もあります。 **図書や文献を読むときの態度(スタイル) [#j2f82de1] 資料を読み解くことを通して、 自分なりのテーマと問題提起をして議論する仕方を学びましょう。 そして、知識の習得と、 自分独自のテーマ・問題の発見をする力を養いましょう。 ***読み方のスキル [#nfdc5ef4] -速読:内容全体をさっとと見通して、その後にその文献での主張を把握し、評価する -精読:ノートを取りながらひとつひとつの文章、論理をじっくりと正確に読み取る 今回の授業では、「精読」で文献を読むことを取り上げます。 ***目次や序文・結論から全体を把握する [#ccd0dc2e] |LEFT:|LEFT:|c |~目次|内容の展開、書かれている順序・構成を把握できる| |~序文(まえがき、はじめに)|その文献の背景、著者の立場や主張したいポイント、対象としている読者層| |~結論(あとがき、まとめ)|著者による要約(全体のまとめ)、あらためてアピールしたい重要なポイントなど| |~索引(インデックス)|全体から重要な語句が抽出されて、整理されている| **要約してまとめる [#de063d42] 文献の要点を的確に読み取り、 その主張や意見を手短にまとめるのが「''要約''」です。 的確な要約をするには、内容を十分に理解していなければできません。 要約の練習をすることで、読み解く力を身につけることができます。 ***パラグラフに注目して読み解く [#t1f6b196] ''パラグラフ''の日本語訳は「段落」ですが、 文書全体の役割上、「パラグラフ=段落」ではありません。 -''形式段落'' : 文頭の一文字が空白で始まる、ひとまとまりの文章 -''意味段落'' : 一つ以上の段落で構成される、''意味上のひとまとまりの文章'' パラグラフには次のような特徴があるので、読み解くときに注意しましょう。 +''ひとつのパラグラフには、ひとつの意味や大事なポイントがある''(大原則) +重要なポイントは、段落の冒頭や末尾にあることが多い +接続詞や形式段落をつなげる文章に注意して、段落同士のつながりを見る(つながりがある≒パラグラフ) |CENTER:|LEFT:|c |~種類|~働き|CENTER:~接続詞の例|h |~付加|別の要素を付け加える|そして、しかも、さらに| |~理由|理由や根拠を述べる|なぜなら、というのは、その理由は| |~対立|反対の要素を述べる|しかし、けれども、反対に、| |~転換|話のながれを転換する|〜だが、ところが、むしろ| |~出発点・並列|同じ要素を述べる|まず、第一に、第二に、第三に、同様に| |~例示|具体例を示す|たとえば、その一つが〜| |~解説|わかりやすく説明する|すなわち、いいかえれば、つまり、要するに| |~帰結|理由や原因の結果を示す|〜ので、〜から、だから、したがって、それゆえ| |~補足|説明を補う|ただし、ただ、もっとも| ***キーワードやキーセンテンスに印をつける [#e3987681] -''キーワード'' : ひとつの段落や章・節のなかで、繰り返し出てくる重要な語句 -''キーセンテンス'' : キーワードを含む文章、重要なポイントと思われる文章 蛍光ペンや付せんなどで、キーワードやキーセンテンスに印をつけておけば、 理解を深めたり、効率良く読み解くのに役立ちます。 ***要約して内容を整理する [#w87ba0ab] -正確に読み解けているかを確認するために、要点を押さえる -自分で勝手に意味をつけたり、見当違いの解釈をしないようにする -段階的に要約していく(要約の過程で、解釈に必要となる部分のみをまとめる) 〈段落・パラグラフの要約〉→〈節・章の要約〉→〈文献全体の要約〉 ***要約の大まかな手順 [#y15d9600] +パラグラフのつながり(接続詞など)に注目して、全体の構成を把握する +パラグラフ(または、節・章)ごとに、キーワードやキーセンテンスを見つける +キーワードやキーセンテンスをもとに、パラグラフ(または、節・章)ごとにまとめる --並び替えや言葉の言い換えをしてもよい +まとめたものを適切につないで、要約を完成する **文章を読み解く [#d9068ed6] 文章を読むときには、 キーワード(カギになる語句)やキーセンテンス(カギになる文章)、 段落をつなげる言葉(接続詞など)に気をつけることが大事です。 さらに、次のような文章の構造にも注目しておきましょう。 ***トピック・センテンス [#xcc2b466] パラグラフ(意味上のひとまとまりの文章)は、 ひとつの話題(トピック)についてだけ扱うという特徴があります。 これを「''1パラグラフ 1トピックの原則''」といい、 論理的な文章(レポート、論文など)はこの原則にしたがっています。 そして、 そのパラグラフで書いた人が主張したいこと(トピック)を説明する文章を、 「''トピック・センテンス''」といい、パラグラフの中で重要な部分です。 一般的には、パラグラフの最初に書かれています。 各パラグラフのトピック・センテンスを読んでいけば、 大まかな内容を読み取ることができます。 ***議論の展開 [#s7837fef] 議論の展開(話のつながり)には、さまざまなタイプがあります。 ここでは、よくある議論の展開を3つのみ紹介します。 :【弁証法的展開】|正(命題)・反(反対命題)・合(総合)の3つの部分からなる展開で、古典的なタイプです。あるテーマについて、自分の意見(正)と、それに対立(または矛盾)する意見(反)を述べ、2つの意見を総合して新たに導き出された意見(合)を述べます。 :【因果による展開】|まずテーマとなっている事実や事象を述べたあと、その原因を明らかにし、さらに原因から生じた結果を示して、最後にテーマに対する解決策を示すというタイプです。 :【比較による展開】|あるテーマについて2つのものを比較・検討するために、まず2つのものの共通点や類似するところを述べ、次に相違点を述べて、最後に全体を総合的に説明するというタイプです。 ***事実と意見の区別 [#k44fdb83] 文章には、「''事実''」と「''意見''」が混ざっています。 文章を読み解くためには、これらを区別することが重要です。 事実とは、出来事や誰もが知り得る情報など、 客観的(誰が見ても同じように受け止めるられる)なものです。 また、意見はどちらかといえば主観的(その人だけが考えたり感じるかもしれない)なものです。 しかし、意見の中にも、 「''客観的な事実''」を根拠とした意見、つまり「''事実に基づいた意見''」があります。 この「客観的な事実」と「事実に基づいた意見」を明確にすることで、 書いた人の考えを読み解くことができます。 **参考文献 [#z2decf3c] -藤田哲也編著「大学基礎講座 改増版」, 北大路書房(2006.03) -中澤務・森貴史・本村康哲編「知のナヴィゲーター」, くろしお出版 (2007.04) -学習技術研究会編著「知へのステップ 第3版」, くろしお出版 (2011.04) -専修大学出版企画委員会編「知のツールボックス」, 専修大学出版局 (2006.04). -佐藤望編著, 湯川武, 横山千晶, 近藤明彦「アカデミック・スキルズ」, 慶応義塾大学出版会 (2006.10). // -小笠原喜博「大学生のためのレポート・論文術」(講談社現代新書 1603), 講談社(2002.04). // -河野哲也「レポート・論文の書き方入門 第3版」, 慶応義塾大学出版会 (2002.12). // -飯間浩明「非論理的な人のための論理的な文章の書き方入門」(ディスカバー携書 029), ディスカバー・トゥエンティワン (2008.12). |