TITLE:第6回 「学習活動の基本スキル(1)」 *第6回 学習活動の基本スキル(1) [#ubae18f0] **図書や文献を読むときの態度(スタイル) [#j2f82de1] -速読:内容全体をさっとと見通して、その後にその文献での主張を把握し、評価する -精読:ノートを取りながらひとつひとつの文章、論理をじっくりと正確に読み取る 今回の授業では、「精読」で文献を読むことを取り上げます。 ***目次や「まえがき」「あとがき」から全体を把握する [#ccd0dc2e] -目次:大まかな内容や書かれている順序・構成を把握できる -「まえがき」:その文献の背景、著者の立場や主張したいポイント、対象としている読者層 -「あとがき」:著者による要約(全体のまとめ)、あらためてアピールしたい重要なポイントなど **資料を読み解く ―クリティカル・リーディング(批判的読解)― [#v857119e] 資料を読むことを通して、 自分なりのテーマと問題提起をして議論する仕方を学びましょう。 そして、知識の習得と、 自分独自のテーマ・問題の発見をする力を養いましょう。 ***パラグラフに注目して読み解く [#t1f6b196] ''パラグラフ''の日本語訳は「段落」ですが、 文書全体の役割上、「パラグラフ=段落」ではありません。 -''形式段落'' : 文頭の一文字が空白で始まる、ひとまとまりの文章 -''意味段落'' : 一つ以上の段落で構成される、''意味上のひとまとまりの文章'' パラグラフには次のような特徴があるので、読み解くときに注意しましょう。 +''ひとつのパラグラには、ひとつの意味や大事なポイントがある''(大原則) +重要なポイントは、段落の冒頭や末尾にあることが多い +接続詞や形式段落をつなげる文章に注意して、段落と段落のつながりを読み解く&br;→つながりがある文章はひとつのパラグラフになる場合が多い ***重要なキーワードやキーセンテンスに印をつける [#e3987681] -''キーワード'' : ひとつの段落や章・節のなかで、繰り返し出てくる語句 -''キーセンテンス'' : キーワードを含む文章、重要なポイントと思われる文章 蛍光ペンや付せんなどで、キーワードやキーセンテンスに印をつけておけば、 理解を深めたり、効率良くくり返し読み解くのに役立ちます。 ***要約して内容を整理する [#w87ba0ab] -正確に読み解けているかを確認するために、要点を押さえる -自分で勝手に意味をつけたり、見当違いの解釈をしないようにする -段階的に要約していく(要約の過程で、解釈に必要となる部分のみをまとめる) --段落・パラグラフの要約&br; →節・章の要約&br; →文献全体の要約 ***内容への自分の意見(疑問・反論・同論)を考える [#wc406809] +著者の主張のうち、中心となる話題や重要な説明をいくつか取り上げる --関心を持った内容、重要と思われる意見など --なぜそれらを取り上げたのか、理由や根拠をはっきりしておく(ただ「関心がある」「面白い」ではダメ) +内容に対しての自分から見た疑問を持ち、その答えを探しながら読む(問題提起) --読む前からあらかじめ自分が持っている疑問 --読んでいくうちに生まれた疑問 +書かれている事実・意見が正しいか論理的に検証する --具体性に欠けていないか --客観的な事実に基づいているか(感情に基づいていないか) +場合によっては文献の主張や意見に対して説得力のある異論を唱える **自分の考えをまとめて相手に伝える ―論理的な文章のまとめ方― [#we0bb468] レポートなどで、 自分の考えを確実に相手に伝え、 それを理解してもらうには、どうすればよいでしょうか。 それには、「''問題点を共有し、自分の考え(結論)とその理由を明確にする''」 ことが重要です。 ***「考えが伝わる文章」の構成 [#m2476f39] 自分が一番伝えたいことを、相手に確実に伝える文章にするには、 次の構成でまとめてみましょう。 +問題 : ひとつの問題を示して問題意識を共有する 「〜すべきかどうか?」「〜どうすればよいか?」「なぜ〜なのか?」 +結論 : 相手を一つの結論へ導く 「すべきである/すべきではない」「それには〜がよい」「なぜなら〜だからだ」 +理由 : 結論にいたる筋道を相手に理解してもらう 「なぜなら〜だからである」 #ref(2010zemi1/6th/zemi0601.png,nolink,考えが伝わる文章の基本構造) なお、「読みやすい文章」だからといって、 それが「考えが伝わる文章」であるとは限りません。 (エッセイ、コラムなど) ***「自分の考え」を明確にする追加要素 [#zd5c4d44] 基本形である「問題・結論・理由」に、 次のような要素を加えると、 さらに説得力のある文章になります。 -理由を支える証拠 : 相手に理由を納得させる根拠を示す 「〜について説明する」「〜によると…」 -反論への備え : 反対意見を想定してそれに対する再反論を示す 「〜という考え方があるが…」「〜という反論があるかもしれない。しかし…」 -結論の確認 : 全体をまとめる **参考文献 [#z2decf3c] -学習技術研究会編著「知へのステップ 改訂版」, くろしお出版 (2006.10) -専修大学出版企画委員会編「知のツールボックス」, 専修大学出版局 (2006.04). -佐藤望編著, 湯川武, 横山千晶, 近藤明彦「アカデミック・スキルズ」, 慶応義塾大学出版会 (2006.10). // -小笠原喜博「大学生のためのレポート・論文術」(講談社現代新書 1603), 講談社(2002.04). -河野哲也「レポート・論文の書き方入門 第3版」, 慶応義塾大学出版会 (2002.12). -飯間浩明「非論理的な人のための論理的な文章の書き方入門」(ディスカバー携書 029), ディスカバー・トゥエンティワン (2008.12). |