第4回 レポートの書き方Ⅰ (1)
要約してまとめる
文献の要点を的確に読み取り、
その主張や意見を手短にまとめるのが「要約」です。
的確な要約をするには、内容を十分に理解していなければできません。
要約の練習をすることで、読み解く力を身につけることができます。
パラグラフに注目して読み解く
パラグラフの日本語訳は「段落」ですが、
文書全体の役割上、「パラグラフ=段落」ではありません。
- 形式段落 : 文頭の一文字が空白で始まる、ひとまとまりの文章
- 意味段落 : 一つ以上の段落で構成される、意味上のひとまとまりの文章
パラグラフには次のような特徴があるので、読み解くときに注意しましょう。
- ひとつのパラグラフには、ひとつの意味や大事なポイントがある(大原則)
- 重要なポイントは、段落の冒頭や末尾にあることが多い
- 接続詞や形式段落をつなげる文章に注意して、段落同士のつながりを見る(つながりがある≒パラグラフ)
種類 | 働き | 接続詞の例 |
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付加 | 別の要素を付け加える | そして、しかも、さらに |
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理由 | 理由や根拠を述べる | なぜなら、というのは、その理由は |
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対立 | 反対の要素を述べる | しかし、けれども、反対に、 |
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転換 | 話のながれを転換する | 〜だが、ところが、むしろ |
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出発点・並列 | 同じ要素を述べる | まず、第一に、第二に、第三に、同様に |
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例示 | 具体例を示す | たとえば、その一つが〜 |
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解説 | わかりやすく説明する | すなわち、いいかえれば、つまり、要するに |
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帰結 | 理由や原因の結果を示す | 〜ので、〜から、だから、したがって、それゆえ |
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補足 | 説明を補う | ただし、ただ、もっとも |
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キーワードやキーセンテンスに印をつける
- キーワード : ひとつの段落や章・節のなかで、繰り返し出てくる重要な語句
- キーセンテンス : キーワードを含む文章、重要なポイントと思われる文章
蛍光ペンや付せんなどで、キーワードやキーセンテンスに印をつけておけば、
理解を深めたり、効率良く読み解くのに役立ちます。
要約して内容を整理する
要約の大まかな手順
- パラグラフのつながり(接続詞など)に注目して、全体の構成を把握する
- パラグラフ(または、節・章)ごとに、キーワードやキーセンテンスを見つける
- キーワードやキーセンテンスをもとに、パラグラフ(または、節・章)ごとにまとめる
- まとめたものを適切につないで、要約を完成する
文章を読み解く
文章を読むときには、
キーワード(カギになる語句)やキーセンテンス(カギになる文章)、
段落をつなげる言葉(接続詞など)に気をつけることが大事です。
さらに、次のような文章の構造にも注目しておきましょう。
トピック・センテンス
パラグラフ(意味上のひとまとまりの文章)は、
ひとつの話題(トピック)についてだけ扱うという特徴があります。
これを「1パラグラフ 1トピックの原則」といい、
論理的な文章(レポート、論文など)はこの原則にしたがっています。
そして、
そのパラグラフで書いた人が主張したいこと(トピック)を説明する文章を、
「トピック・センテンス」といい、パラグラフの中で重要な部分です。
一般的には、パラグラフの最初に書かれています。
各パラグラフのトピック・センテンスを読んでいけば、
大まかな内容を読み取ることができます。
議論の展開
議論の展開(話のつながり)には、さまざまなタイプがあります。
ここでは、よくある議論の展開を3つのみ紹介します。
- 【弁証法的展開】
- 正(命題)・反(反対命題)・合(総合)の3つの部分からなる展開で、古典的なタイプです。あるテーマについて、自分の意見(正)と、それに対立(または矛盾)する意見(反)を述べ、2つの意見を総合して新たに導き出された意見(合)を述べます。
- 【因果による展開】
- まずテーマとなっている事実や事象を述べたあと、その原因を明らかにし、さらに原因から生じた結果を示して、最後にテーマに対する解決策を示すというタイプです。
- 【比較による展開】
- あるテーマについて2つのものを比較・検討するために、まず2つのものの共通点や類似するところを述べ、次に相違点を述べて、最後に全体を総合的に説明するというタイプです。
事実と意見の区別
文章には、「事実」と「意見」が混ざっています。
文章を読み解くためには、これらを区別することが重要です。
事実とは、出来事や誰もが知り得る情報など、
客観的(誰が見ても同じように受け止めるられる)なものです。
また、意見はどちらかといえば主観的(その人だけが考えたり感じるかもしれない)なものです。
しかし、意見の中にも、
「客観的な事実」を根拠とした意見、つまり「事実に基づいた意見」があります。
この「客観的な事実」と「事実に基づいた意見」を明確にすることで、
書いた人の考えを読み解くことができます。
参考文献
- 藤田哲也編著「大学基礎講座 改増版」, 北大路書房(2006.03)
- 中澤務・森貴史・本村康哲編「知のナヴィゲーター」, くろしお出版 (2007.04)
- 学習技術研究会編著「知へのステップ 第3版」, くろしお出版 (2011.04)
- 専修大学出版企画委員会編「知のツールボックス」, 専修大学出版局 (2006.04).
- 佐藤望編著, 湯川武, 横山千晶, 近藤明彦「アカデミック・スキルズ」, 慶応義塾大学出版会 (2006.10).