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第8回 学習活動の基本スキル(2)

文章を読み解く

文章を読むときには、 キーワード(カギになる語句)やキーセンテンス(カギになる文章)、 段落をつなげる言葉(接続詞など)に気をつけることが大事です。 さらに、次のような文章の構造にも注目しておきましょう。

トピック・センテンス

パラグラフ(意味上のひとまとまりの文章)は、 ひとつの話題(トピック)についてだけ扱うという特徴があります。 これを「1パラグラフ 1トピックの原則」といい、 論理的な文章(レポート、論文など)はこの原則にしたがっています。

そして、 そのパラグラフで書いた人が主張したいこと(トピック)を説明する文章を、 「トピック・センテンス」といい、パラグラフの中で重要な部分です。 一般的には、パラグラフの最初に書かれています。 各パラグラフのトピック・センテンスを読んでいけば、 大まかな内容を読み取ることができます。

議論の展開

議論の展開(話のつながり)には、さまざまなタイプがあります。 ここでは、よくある議論の展開を3つのみ紹介します。

【弁証法的展開】
正(命題)・反(反対命題)・合(総合)の3つの部分からなる展開で、古典的なタイプです。あるテーマについて、自分の意見(正)と、それに対立(または矛盾)する意見(反)を述べ、2つの意見を総合して新たに導き出された意見(合)を述べます。
【因果による展開】
まずテーマとなっている事実や事象を述べたあと、その原因を明らかにし、さらに原因から生じた結果を示して、最後にテーマに対する解決策を示すというタイプです。
【比較による展開】
あるテーマについて2つのものを比較・検討するために、まず2つのものの共通点や類似するところを述べ、次に相違点を述べて、最後に全体を総合的に説明するというタイプです。

事実と意見の区別

文章には、「事実」と「意見」が混ざっています。 文章を読み解くためには、これらを区別することが重要です。

事実とは、出来事や誰もが知り得る情報など、 客観的(誰が見ても同じように受け止めるられる)なものです。 また、意見はどちらかといえば主観的(その人だけが考えたり感じるかもしれない)なものです。

しかし、意見の中にも、 「客観的な事実」を根拠とした意見、つまり「事実に基づいた意見」があります。 この「客観的な事実」と「事実に基づいた意見」を明確にすることで、 書いた人の考えを読み解くことができます。

クリティカル・リーディング(批判的読解)

単に文献の内容を正確に理解するだけでなく、 批判的に考えながら読むこと(クリティカル・リーディング)で、内容を吟味し、 自分自身を意見を創り出すことが大切です。

  1. 著者の主張のうち、中心となる話題や重要な説明をいくつか取り上げる
    • 関心を持った内容、重要と思われる意見など
    • なぜそれらを取り上げたのか、理由や根拠をはっきりしておく(ただ「関心がある」「面白い」ではダメ)
  2. 内容に対しての自分から見た疑問を持ち、その答えを探しながら読む(問題提起)
    • 読む前からあらかじめ自分が持っている疑問
    • 読んでいくうちに生まれた疑問
  3. 書かれている事実・意見が正しいか論理的に検証する
    • 具体性に欠けていないか
    • 議論に矛盾がないか
    • 客観的な事実に基づいているか(感情に基づいていないか)
  4. 場合によっては文献の主張や意見に対して説得力のある異論を唱える

「書評」を書いてみる

文献や資料を批判的に読んで(クリティカル・リーディング)、 それを元にある問題点について批判的に考える(クリティカル・シンキング)の練習として、 文献や資料の批評、書評(クリティカル・レビュー)をしてみましょう。

書評全体の構成は、次のようになります。

  • 文献の情報:著者名 発行年『題名・書名』出版社
  • (1) 目的の提示 (全体の10%ほど)
    • どんなテーマの文献への批評(コメント)なのか、著者がどんな議論をしているのか、内容を大まかに紹介する。
    • 以下で述べる手順について簡単に説明する。
  • (2) 要約 (全体の30〜40%ほど)
    • 文献やパラグラフ(段落)の順を追って、メリハリをつけて要約する。
      • まず、パラグラフを一文で要約。
      • パラグラフの要約をつなげたものを、さらに一文で要約。
      • 場合によっては、節→章の順に、要約していく。
    • キーワードやキーセンテンスについて説明をし、また、専門用語や重要な概念には解説をする。
  • (3) 問題提起 (全体の10〜20%ほど)
    • 著者の主張のうち、中心的・重要な話題を数点取り上げる。
      • 自分が関心を持った主張、重要と思われる意見をピックアップし、その理由や根拠を示す(ただ「関心がある」「面白い」ではダメ)。
    • それらに対しての自分自身の問題提起(疑問、反論、同意)を行う。
  • (4) 議論(全体の30〜40%ほど)
    • 自分で提起した問題について、議論を展開する。
    • 自分の主張を、別の例の提示や別の説明などを説得力のあるかたちで、論理的・実証的に説明する。
  • (5) まとめ(全体の10〜20%ほど)
    • 以上をまとめて要約し、結論づける。

宿題(提出期限:6月12日の授業)

  • 前回配布し、今回シートにまとめた文献の書評を書いて提出すること
    • 紙のサイズは「A4」で、枚数は2,3枚程度(ホッチキス止めはしないこと)
    • 手書きでも、ワープロで作成して印刷してもよい
    • 1枚目の最初のほうには、次のように書いておくこと
        「基礎ゼミI」レポート
         担当教員:河野 稔(水曜日 1時限)
         提 出 日:2013年6月12日(水)
      
      
         健康科学部 健康システム学科
           <学籍番号> <自分の氏名>

次回(6月5日):「文章の書き方 (2)」

  • 「基礎ゼミI」で学習支援センターが連携して、授業を行う(2回目)
    • 「文章を書く(ライティング)」がテーマ(予定)
    • 9時に5号館402教室へ集合(教室を間違えないこと!)

参考文献

  • 藤田哲也編著「大学基礎講座 改増版」, 北大路書房(2006.03)
  • 中澤務・森貴史・本村康哲編「知のナヴィゲーター」, くろしお出版 (2007.04)
  • 学習技術研究会編著「知へのステップ 第3版」, くろしお出版 (2011.04)
  • 南田勝也・矢田部圭介・山下玲子「ゼミで学ぶスタディスキル」, 北樹出版 (2011.04)
  • 専修大学出版企画委員会編「知のツールボックス」, 専修大学出版局 (2006.04).
  • 佐藤望編著, 湯川武, 横山千晶, 近藤明彦「アカデミック・スキルズ」, 慶応義塾大学出版会 (2006.10).
  • 河野哲也「レポート・論文の書き方入門 第3版」, 慶応義塾大学出版会 (2002.12).

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Last-modified: Tue, 11 Mar 2014 19:42:02 JST (3704d)