第5回「学習活動の基礎的知識(2) 情報収集」
レポートを書く(応用編)
引用のしかた
- 「引用」とは、レポートや論文で、他の文献の意見や考えを紹介して、自分の意見を明確にする
- 引用するときの一番の注意点は、どの部分が引用なのか、それがわかるように書くこと
- 他人の意見を自分の意見のように書くことは、いわゆる「盗作」という犯罪になる
- また「引用に自分の意見を語らせない」で、自分の意見を陰陽とは別に書く
- また引用は、必要最低限にとどめる
引用のしかたには、いくつかのやり方があるが、一般的なやり方を説明する。
- 要約して引用:必要かつ十分な長さで要約する
- 短い引用(2行以内):引用文をカギカッコ(「」)でくくる
安田は、人々から組織の関係をとらえるのに「現象から記号(すなわち)
モデルを投資するような柔軟性を備えなければならない」と述べている。
- 長い引用(3行以上):引用文の前後に1行空けて、左側を2〜3文字分字下げする
安田は、『ネットワーク分析』のなかで、次のように述べている。
言葉をかえて言うならば、「行為者の行為を、個人的な属性からで
はなく、その行為者を取り囲むネットワークによって説明する」た
めの分析をおこなうのが、ネットワーク分析です。
つまり……
なお、2番目と3番目の場合は、
一字一句正確に引用し、
勝手に加筆・訂正してはいけない。
参考文献の示し方
- 引用したり参考にした資料があれば、
その出典(情報の出所)を、
「参考文献」として書き出す
- 参考文献として示すのに必要な情報は、
奥付(巻末の、著者や出版社、出版地が書かれた部分)にある
- 参考文献の示し方には、分野や年代によって、いくつかの書き方があることに注意
- 単行本(単著、共著)
- 書式:著者『書名』、出版社、出版年(西暦)。
- 例:安田雪『実践ネットワーク分析』、新曜社、2001年。
- 例:増田直紀、今野紀雄『複雑ネットワークの科学』、産業図書、2005年。
- 単行本(編著)
- 書式:編著者『書名』、出版社、出版年(西暦)。
- 例:佐藤嘉倫・平松闊編『ネットワーク・ダイナミクス』、勁草書房、2005年。
- 翻訳書
- 書式:原著者『書名』、翻訳者、出版社、(西暦)。
- 例:アルバート=ラズロ・バラバシ『新ネットワーク思考』、青木薫訳、NHK出版、2002年。
文献を読む ―クリティカル・リーディング(改良版)―
「どこが、何が、面白かったのか」「どうして面白いと思ったのか」
「他の本と比べてどんな特徴があるのか」など、
批判的・分析的に読む。
書評(クリティカル・レビュー)を書く
書評を通して、
自分なりのテーマと問題提起をして議論する仕方を学ぶ。
そして、知識の習得と、
自分独自のテーマ・問題の発見をする力を養う。
書評の内容
- タイトル
- 目的の提示(全体の10%ほど)
- どんなテーマの文献についての批判なのか、著者がどんな議論をしているのか大まかに説明する。
- 以下で述べる手順について簡単に説明する。
- 要約(全体の30〜40%ほど)
- 文献やパラグラフ(段落)の順を追って、メリハリをつけて要約する。
- まず、パラグラフを一文で要約。
- パラグラフの要約をつなげたものを、さらに一文で要約。
- 場合によっては、節→章の順に、要約していく。
- キーワードやキーセンテンスについて説明をし、また、専門用語や重要な概念には解説をする。
- 問題提起(全体の10〜20%ほど)
- 著者の主張のうち、中心的・重要な話題を数点取り上げる。
- 自分が関心を持った主張、重要と思われる意見をピックアップし、その理由や根拠を示す(ただ「関心がある」「面白い」ではダメ)。
- それに対しての問題提起(疑問、反論、同意)を行う。
- 議論(全体の30〜40%ほど)
- 問題提起した内容について、議論を展開する。
- 別の例の提示や別の説明などを説得力のあるかたちで、論理的・実証的に説明する。
- まとめ(全体の10〜20%ほど)
参考文献
- 学習技術研究会編著「知へのステップ 改訂版」, くろしお出版 (2006.10)
- 専修大学出版企画委員会編「知のツールボックス」, 専修大学出版局 (2006.04).
- 佐藤望編著, 湯川武, 横山千晶, 近藤明彦「アカデミック・スキルズ」, 慶応義塾大学出版会 (2006.10).
- 小笠原喜博「大学生のためのレポート・論文術」(講談社現代新書 1603), 講談社(2002.04).
- 河野哲也「レポート・論文の書き方入門 第3版」, 慶応義塾大学出版会 (2002.12).