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AND OR

対応のある2組の平均値の差の検定

検定の対象

対応のある(同じ母集団の)2組の標本について考える。それぞれの統計量は次のとおり。

  • 例えば、ある教育の前と後の効果、実験の前と後の結果の違いなどを調べる
 標本1(前)標本2(後)
標本数\normalsize n
標本平均\normalsize \bar{x}_1\normalsize \bar{x}_2

対応のあるt検定

  • 母集団が正規分布にしたがっていることを、一応前提とする

帰無仮説と対立仮説

対応のある2組の標本の平均に差があるかどうかを調べる。

  • 帰無仮説 \normalsize H_{0} は「2組の標本の平均に差はない」 : \normalsize \bar{x_1} = \bar{x_2}
  • 対立仮説 \normalsize H_{1} は「2組の標本の平均に差がある」 : \normalsize \bar{x_1} \neq \bar{x_2

検定統計量の算出

  • 2組の標本のデータの差 \normalsize d を計算し、その差の標準偏差を算出する
    s_d = \sqrt{ \frac{ \sum_{i=1}^n (d_i - \bar{d} )^2}{ n - 1 } }
  • t分布にしたがう、検定統計量 \normalsize t_0 を次の式から算出する
    t_0 = \frac{ \bar{d} }{ \frac{s_d}{ \sqrt{n} } }

仮説の判定(両側検定)

  • 検定統計量 \normalsize t_0 と、自由度 \normalsize df = n - 1 、有意水準 \normalsize \alpha の有意点の値(t分布表などから求める)を使って、判定をする
    • 帰無仮説 \normalsize H_{0} を棄却 : \normalsize |t_0| > t_{(\alpha/2)}(n - 1)
      • 「有意に差がある」「検定の結果、有意である」「平均に差がある」
    • 帰無仮説 \normalsize H_{0} を採択 : \normalsize |t_0| < t_{(\alpha/2)}(n - 1)
      • 「有意に差はない」「検定の結果、有意でない」「平均に差があるとはいえない」

例題

  • 街頭で180人の人に「体重を教えてください」と声をかけたときに、答えた体重と本当の体重の差にについて、その差の平均は1.676kg、差の標準偏差は10.218kgであった。このとき、街頭で声をかけられて答えた体重と本当の体重に差はあるか?

考え方

街頭で声をかけて答えた体重と本当の体重について、答えた人数や体重の平均と差の標準偏差についてまとめると、次の表のようになる。

 回答された体重
標本数\normalsize n = 180
差の平均\normalsize \bar{d} = 1.676
差の標準偏差\normalsize s_d = 10.218

街頭で声をかけて答えた体重と本当の体重について差があるかどうか調べたいので、 帰無仮説と対立仮説は、次のようになる。

  • 帰無仮説 \normalsize H_{0} : 「街頭で声をかけて答えた体重と本当の体重に差はない」
  • 対立仮説 \normalsize H_{1} : 「街頭で声をかけて答えた体重と本当の体重に差がある」

差の平均は、次のように、対応するデータ同士の差を求めて、 その合計を標本数で割ったものになる。

 答えた体重本当の体重
回答155kg60kg-5
回答252kg56.5kg-4.5
回答363kg61kg2
回答478744
回答 n\normalsize x_{1n}\normalsize x_{2n}\normalsize d_n = x_{1n} - x_{2n}
平均\normalsize \bar{x}_1\normalsize \bar{x}_2\normalsize \bar{d}

t分布にしたがう検定統計量 \normalsize t_0 を求めると、 次のようになる。

\begin{eqnarray}t_0 &=& \frac{ \bar{d} }{ \frac{s_d}{ \sqrt{n} } } \\[10]&=& \frac{ 1.676 }{ \frac{10.218}{ \sqrt{180} } } \\[10]&=& 2.20062\cdots = 2.201\end{eqnarray}

この検定統計量を両側検定で判定する。 有意水準 \normalsize \alpha =0.05 では、 自由度 \normalsize df = 180 - 1 = 179 のt値を分布表から調べると、 該当する自由度がないため、最も近い自由度120のときのt値を読み取ると、 \normalsize |t_0| > t_{(\alpha/2)}(179) \simeq t_{(\alpha/2)}(120) = 1.980 となり、 帰無仮説は棄却される。 つまり、有意水準 5% で仮説検定を行った結果、 街頭で声をかけてときに答えた体重と本当の体重には差がある

なお、有意水準 \normalsize \alpha =0.01 では、 該当する自由度がないため、最も近い自由度120のときのt値を読み取ると、 \normalsize |t_0| < t_{(\alpha/2)}(179) \simeq t_{(\alpha/2)}(120) = 2.617 となり、 帰無仮説は棄却できない。 つまり、有意水準 1% では、街頭で声をかけてときに答えた体重と本当の体重には差があるとはいえない。


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Last-modified: Tue, 11 Mar 2014 19:49:35 JST (3698d)